(COVID関連ルールはオーストリア各州で異なるし刻々と変わっているのでご自分で確認してください)
コロナ禍で休業中だったイベント設営会社に夏から復帰したわけだが、
最近イベントの開催も増え、以前と同じとは言えないまでも、
それなりに普通の勤務状況に戻りつつある。
さて私が働くこの会社はこの10月からCOVID関連対策として「2Gルール」を従業員に求めることになった。
オーストリアでは多くの場所で今までいわゆる「3Gルール(geimpft=ワクチン接種済み、genesen=感染し抗体保有、getestet=テストの結果陰性のいずれかの証明を用意するというルール)」が適応されていたのだが、
ワクチン接種率の増加と効果が現れてきたことによって、
3Gから陰性証明テストを除いた2Gのどちらかでなければ、入場を制限される場所がある。
500人以上のイベントもその一つで、入場者は2Gが求められる。
一応、政府の規定では、勤務者は2GまたはFFP2マスクの着用となっているが、
もし開催側からクラスターが発生したら大問題になるため、
我々のようなイベント設営会社も開催施設やイベンターから2Gを求められるので、
会社の方針で2Gじゃない人は働けないということにしたのである。
私自身はワクチンは強制できるものではないし、
いい大人で射ちたくない奴は自分の責任で射たなきゃいいんじゃないのとは思うが、
野外や郊外でイベントがあるときは、いちいち2Gじゃない従業員をテストができる施設まで運んでいられないので、会社の判断は至極現実的であると思う。
そんなこんなで、反ワクチンの同僚が一人、仕事に来なくなった。
ゴネにゴネているらしいが、私も含め他の同僚は誰も同情していない。
イベント設営の会社の実働班なのに、
「俺にはホームオフィスする権利がある!」と言っていると聞いた。
一応設営関係の機材の移動の手配などオフィス業務が半分を占めていたらしいが、
基本的には人が足りなければ現場を手伝うのが弊社の常識なので、
まあ当たり前だがそんな要求は受け入れられない。
経理でもやってたのなら別だが。
彼は私が設営担当する班の手伝いもしていたのだが、
ものすごいチェーンスモーカーで、一緒に仕事していると20分に1回はタバコ休憩が入る。1時間のうち体を動かしているのはいいとこ40分だっただろう。
いつもすごい悪い咳をしているし、息が続かないのか体力がない。彼は50代だがもっと年上でももっと元気に働いている同僚もいるので、微妙だなー・・・とはコロナ禍の前から思っていたのだった。
10月に入り彼と会社が膠着状態にあったある日、
彼が胸の痛みを訴えて病院に運ばれるらしいという噂を聞いた。
彼の家族が会社に連絡してきたのだった。
お見舞いのカードを秘書の子が回しにきて、みんなで寄せ書きをしているときに、
同僚の一人が、
「これでさー、手術だ薬だ、って、”現代医療”ってヤツのお世話になるわけだろ?何が違うのかねー、ワクチンと。誰かが勝手に麻酔だとかいって、バチっと射っちゃえばいいのに」とジョークを言った。
私たちはハハハ・・・と乾いた笑いをするしかなく、やるせない雰囲気が漂った。少し話してみると、他の同僚たちも同様に、彼の度を越したタバコ休憩には思うところあったようだ。
悪い人ではなかったけれど・・・と誰もが口を揃えていう。ここにきて誰にも同情されないというのが、彼がここで10年働いてきた結果かと思うとさびしい。