死ぬまでにしたいいろんなこと

墺太利(おーすとりあ)滞在6年

あまりにも幸せな1日だった。

 

朝起きて、日記を書いて、朝ごはんを食べた。

冷凍しておいた手作りのお餅と、これまた冷凍しておいた手作りのつぶあん

レンジであっためてあんこ餅にして、苦めのエスプレッソで作ったカフェラテをお供に食べる。

お餅はもち米からフードプロセッサーで細かくしてレンジで蒸して作ったものなので、コシはいまいちだがふわふわでトロトロで、あんこと絡みやすくてものすごくおいしかった。

溜まっていた洗濯物をごうんごうん回して、コーン茶を飲みながら少し休憩。

顔を洗って、着替えて、メイクして、気が向いたので髪をコテでくるっくるに巻いてみる。

終わった洗濯物を乾燥機にうつして、洗濯機は2回戦目。

夫の叔母から「失業後にやんなさい」ともらった1000ピースジグソーパズルの続きをやる。

 そうこうしているうちに朝に弱い夫が起きてきて、

ブランチにFritattensuppe(塩味の薄い卵入りパンケーキを細長い短冊状に切ったものを具にしたビーフスープ)を作るというので、台所でそれを手伝う。

ビーフスープは昨日6時間かけて大鍋で夫がコトコト煮たものを今日食べるぶん温めるだけ。

なのでパンケーキ部分だけ新鮮なものを作る。

小麦粉と卵と牛乳で作るシンプルな生地に、

塩胡椒、細かく刻んだチャイブと、少し唐辛子を入れる。

油をしいてよく温めたパンケーキ用のフライパンに生地を流し込み、両面にこんがり色がつくくらい焼く。

焼いたらまとめてクルクルと巻いて、短冊状に切り、温めておいたスープに浮かべて出来上がり。

先に食べ終わった夫がスープを密閉容器に小分けにする。

一つは義理の母に、もう一つは夫が弟のように可愛がっている歳の離れた友人に。彼は今、具合が悪くて大変らしい(コロナは陰性)。

 

スープを手提げ袋に入れて、ジャケットを着込んでいざ出発。

外は雨模様で、フードをかぶって急いでまずは義理の母のところへ。

コーヒーをいただいて、近況を報告しあう。と言っても、2日前にあったばっかりなのだけど。

 

それからバスを乗り継いで友人のところへ。

ブロンドのツンツン頭がトレードマークだったのに、髪を切りに行けないせいで別人のような出で立ち。

喉が痛くて食事がろくにできないと言っていたので、スープをとてもありがたがっていた。

時期が時期なだけに、全員マスク着用で玄関先で挨拶するぐらいしかできない。

 

外に出ると風が強くなってきていて、薄手のジャケットだった夫はバスを待ちながらガタガタ震えていた。

バスの中で夫が、なんか甘いもの食べたい、と言い出し、日曜日でもやっているパン屋さんで、ケーキをふたつ買って帰った。

コートを脱いで、手を洗って、熱いコーヒーを入れて、ケーキを食べながらふたり、ほっと息をつく。

いい日曜だったね、と。

 

もしタイムマシンに乗ることができたら私、過去の自分のところに行って、

『いつか心から "ああ、なんてクソみたいに平和でしあわせな一日なんだ" って思える日が来るから、絶対に諦めるな!今は全然信じられないかもしれないけど、絶対に諦めるなよ!』

って言いに行くわ。

 

と私が言うと、夫が笑いながら返す。

 

じゃあ過去の僕のところにも行って同じこと言っておいて、『絶対に諦めるな、いつか誰かと寄り添って生きていける日が来る、そういう結婚相手が見つかるから』って。

 

私たちふたりは、別に美男美女でもないし、特別な才能やストーリーがあるわけでもない。

ビザの更新とか、トイレが壊れたとか、人種差別主義者とか、これからも変わらず腸が煮えくり返るようなこともたびたび起こるだろう。

それでもこんな完璧な日曜日が来るのだから、神様だかなんだかそういうものが、もしかしたらあるのかもしれないなどと、くだらないことまで思ってしまう、

そんな1日だった。