死ぬまでにしたいいろんなこと

墺太利(おーすとりあ)滞在6年

食の細い義母のこと

私の義理の母は80歳近い。

彼女が30歳を過ぎて夫を産んだこともあり、私と夫が一回り歳が違うこともあり、私の母よりはかなり年上だ。

 

とても美しい女性で、アッパーミドルのお家出身ということもあって、お上品な感じ。今でも毎日お化粧とお洒落は怠らないし、若い頃に乗馬をやっていて太るのが嫌だからと偏食していたら(どこの皇妃エリザベートだ)、極端に好き嫌いが多いまま現在に至ったそうな。そして実際、同年代のオーストリア女性と比べてかなり細身である。

 

個人的な考えだが、ある程度歳を取ると、多少の脂肪は必要なんじゃないかと思う。私が会ってきた元気なお年寄りは、肥満ではないけどある程度お肉がついている人ばかりだ。それは病気になった時の余力というか、備蓄的に働くのではないかと思う。

 

義母は私が夫と出会った頃は国外旅行でもどこにでもひとりで出かけて行ってしまうような人だったが、1年過ぎた頃に呼吸器疾患にかかり、急速にそれが悪化した。国外旅行には行けなくなり(飛行機の気圧で呼吸が苦しくなるので)、今年に入って酸素吸入が時々必要になり、ロックダウン以降は、近所への買い物も私や夫が代わりに行っている。

 

一人暮らしの義母が数日分の食料として我々に頼むのはいつも決まりきったもので、赤ワイン、チーズ、パン、スモークサーモンやハム、牛乳、旬の果物、フルーツジュース、インスタント食品の中から数品。火を使う料理は一切しない。

甘いものも嫌いで、例外は夏に食べるアイスクリームとたまに食べるナッツ入りの板チョコのみ。

お買い物依頼も1週間に1回あればいい方で、ときどき霞を食べて生きてるんじゃないかとの疑惑が持ち上がる。

 

月に一度くらいのペースで夫と義弟と私が一堂に訪問して一緒に食事するのだが、その度に全員から「もっと食べなさい」と言われてしゅんとしている。何か言い返すと夫と義弟が仕返しのようにかつての彼女の口癖を真似して「全部食べ終わるまでテレビは見せません!」と言い、彼女は「こんな意地悪な息子に育てた覚えはない〜」と言って、みんなで笑うのが恒例である。

 

ロックダウンになってすぐの頃、久しぶりに日本の春巻きが食べたくなって、春巻きの皮と春雨としいたけをアジアスーパーで買って、たくさん揚げた時があった。夫に食べさせたら、これはママが絶対好きな味だから、少し持って行ってあげてよ、という。幸い義母はスープの冷めない距離に住んでいるので、揚げたての春巻きを包んで急いで持っていった。

 

家に着いてしばらくすると、義母から夫に電話があって、ものすごい美味しかった!ありがとうと伝えてくれと。夫に言ったってことは、社交辞令ではないのだな、と嬉しかった(オーストリア人は日本人よりは直接的ですが、社交辞令も言います)。

 

それから月3回くらいのペースで、義母をこれ以上痩せさせないために、がんばって春巻きを作りましたよ、嫁は。春巻き高カロリーだし。そしてそれをせっせと持っていったので、近所の人で私が嫁だと知らない人には、義母はしょっちゅう中華のデリバリーを頼む人と思われていただろう・・・

 

そして先月、久しぶりに日本のカレーパンが食べたくなって、カリッと揚げたところ、夫が絶賛し、これも義母に持って行ったところ、義母の新たなお気に入りに。普段ちっちゃいトースト1枚食べたら「お腹いっぱい」っていうのに、カレーパンはそれなりに大きいのを1つぺろっと食べてくれた。

 

というわけで、暑いなか今日もカレーパンを揚げて持って行きました。いや、好きでやってるんだから別にいいんだけど。揚げ物が好きみたいなので、夏はちょっと暑いのが難点。

 

この間みんなで一緒に行った韓国料理屋のプルコギをいたく気に入っていたので、近々プルコギを作ってみる予定。義母のおかげで料理のレパートリーが増えてありがたい。