死ぬまでにしたいいろんなこと

墺太利(おーすとりあ)滞在6年

普通を求めて三千里

好きな仕事をしていたって週休2日じゃ生きていかれない私のようなできそこないは、

「普通」と言われる働き方のはずなのに、「普通」のことが何ひとつできていやしない。

世の人々はどうやって週休2日でしかも子供を育てたり植物を育てたり家事やら介護やら人付き合いやら趣味やらボランティアやらをやっているのだろうか。

私なんか自分の餌やりだってろくにできないのに。

 

もう何もしたくないぜ。

 

ぐうたらと横になりながら、片耳を枕に押しつけていると、

せっかく休業中に鍛えた筋肉が溶けるようにおとろえて、

かわりに黄色い脂肪細胞がびちびちと油滴を蓄えながら増殖していく音が聞こえる。

ような気がする。

 

日本にいた頃よりは「普通」の圧が薄い環境であるのでかなり楽ではあるが、

自分の理想の「普通」には程遠すぎて、

「普通」を求める努力の成果が現れるより先に、

おそらく老化による劣化に追いつかれて私は、

きっとこれ以上に「普通」に近づくことなんてできずに、

墓に埋められる日を迎える気がする。

 

窓から見える中庭の緑が、秋の青い空に映えて美しい。

ウィーンはこれからとてもとても短い秋を迎えて、

それから長くて灰色の冬がやってくる。