死ぬまでにしたいいろんなこと

墺太利(おーすとりあ)滞在6年

旅先で出会ったひと

先日、仕事でドイツに行った時のこと。

帰りのウィーン行きの飛行機を、デュッセルドルフ空港で待っていた。

夕方18時発の飛行機はすでに1時間の遅延が決まっていた。

LCCだから仕方ないとはいえ、仕事で疲れていたし、けっこううんざりしていた。

 

ゲート近くの座席は、ウィーン行きの便を待つ乗客と、ほとんど同時刻にザルツブルクに向かう便を待つ乗客とで、ほぼ満席になっていた。私は運良くその一つに腰掛けることができた。

右隣に老紳士が座っていた。素足にローファー、丈が短めの麻のパンツ、バカンス帰りっぽいおしゃれなおじいさんだった。

 

ここでさらに30分の遅延を知らせる放送・・・

 

アベルリンは機内で飲み物が出ないので、買ってくることにした。

でも今、席をたったら、戻ってきた時、絶対にもう座ることができない。

私は疲れ切っていて、どうしてもその席を確保しておきたかったので、

貴重品は全部身につけた上で、カバンを席の上において、さっと飲み物だけ買いに行くことにした。

 

ジュースを買って戻ってくると、件の老紳士が英語でなにやら話しかけてきた。

高齢(少なくとも80歳以上に見えた)なこともあり、よく聞き取れなかった。

私が"Sorry?"と言うと、英語ができないと思ったのか、ドイツ語で、

「あなたの席を取りに来た人がいたけど、守りましたよ」と言ってくれた。

丁寧にお礼を言った後、少しドイツ語で会話した。

ゆっくり話してくれたので、とてもわかりやすかった。

 

おじいさんはなんと90歳(!)で、元エンジニア。

ウィーン出身だけど、アメリカにうつり住んで60年近く経つという。

うち30年はカリフォルニア、あとの30年はカリブ海地域に住んでいるとのこと。

その間に、フランスでも仕事をし、フランス語、英語、スペイン語、ドイツ語を話す。

その日はザルツブルクの近くに住む弟さんを訪ねに来ていたそうだ。

 

私が「たくさんの言語を習得するコツはなんですか?」と聞くと、

「必ずその言葉を話している国に行くこと、あと、その言葉ができることで受けられる恩恵について考えること」とのこと。

 

彼は4言語ができることで世界を渡り歩いて仕事をすることができたので、

外国語を積極的に学ばないアメリカ人には呆れているらしい(笑)

 

後半は英語でしゃべっていたのだけど、

「君は英語がすごく上手だけど、どこで勉強したの?」と言われた!

私が「日本で学校で勉強して、あとは自分で努力しました」と言うと、

「君は才能があるよ。だから2年しかいないのにドイツ語がそんなに上手なんだね」と。

 

社交辞令でも、ほめられるのは、やっぱりうれしい。

 

そのあと、私の飛行機の搭乗がはじまり、老紳士とはそこでお別れ。

 

お互いに

 

"Viel Glück!!"

(幸運を!)

 

と言い合った。